脳損傷・高次脳機能障害
   サークルエコー
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SSKU

vol.28(2007年5月号)

 

 

サークルエコーとは
事故や病気によって脳にダメージを受けると、
新しいことが覚えにくくなったり、
意欲が低下したり、
感情のコントロールが難しくなるなどのため、
社会生活の様々な場面で
問題が生じることがあります。
このような後遺症を高次脳機能障害といいます。
目に見えにくい障害のため、
社会の理解を得にくいこと、
したがって現行の福祉制度を
利用することが難しい点が
大きな問題となっています。
サークルエコーは、
高次脳機能障害をとりまく問題の中で、
特に日常生活に「介護」の必要な
重度の障害について取り組んでいます。
  目次
特集
   
理解することが回復につながる
           首都大学東京・教授 渡邉 修 
ニュース
   
第 2 回地方支援拠点機関等全国連絡協議会開催
   
適切な支援で安定した
     日常を取り戻すことができる   
特別企画 
 
  アヤちゃんの 1 週間の過ごし方
連載
  ・心のファイルから
    
家族 3 人、精一杯に走っている姿を、
       お父さんは、きっと見ている
  ・喜怒哀楽

 

特集   理解することが回復へつながる

首都大学東京・教授 渡邉 修

脳には可塑性がある、だから脳は回復する……。よく耳にする言葉です。では、どのようにしたら脳は回復していくのでしょう。昨年のエコー合宿にご参加いただいた首都大学東京・教授の渡邉修先生に、高次脳機能障害をよくするのにはどうしたらいいのか伺いました。


なぜケーキに塩をかけてしまうのか
 高次脳機能障害は、いろいろな病気で脳に障害を受けてしまった後遺症です。脳を損傷した原因、損傷箇所などにより、その症状はさまざまです。
 通常リンゴを見ると、リンゴの映像は脳の後ろ側、頭頂葉に映ります。リンゴの赤い色や丸みなど視覚的なものが理解されると、リンゴだと認識されます。耳で聞いた音が側頭葉に達し、始めてピアノの音だと認識されます。はさみを手でさわったときの「長い、冷たい」という感触が側頭葉に届き、「これははさみだ」と認識されるのです。
 しかし、脳に障害があったら、見えていてもそれが何かわからないという症状が起きます。自分の孫がわからない、ケーキに塩をかけるという症状は、見たものが認識できないから起きるのです。このような場面に遭遇すると、家族は愕然とします。しかし、脳を損傷したら、こういうことが起きるかもしれないと理解するだけで、気持ちは違ってくるのです。だから、脳を理解することは大切なのです。

注意力はすべての能力の基盤である
すべてのリハビリの基本にあるのは環境調整です。これなくして、リハビリの成果は得られません。
 私もたくさん引き出しがあると、どこに何が入っているのかわからなくなることがあります。当事者がこのような状況に陥ったら混乱します。だから、引き出しに名前をつけてあげることが大切です。当事者にとってわかりやすい環境を整えてあげるのです。わかりやすい環境にすることを「構造化」といいます。環境を構造化することは、最初にやるべきことです。
 環境調整としては、急性期に音や光がうるさいと言う人には、外部からの刺激を制限してください。回復期以降は、当事者にとってわかりやすい環境と、たくさん時間をつくってあげることが大切です。一般に障害は、スピードを増すと増強されるので、十分な時間をかけた対応をすることが大事です。障害をあらわにしないということは、当事者に緊張を与えない、ストレスをかけないことにつながるので、これも環境設定なのです。
 脳には、空間全体を認知する機能や言語機能など、さまざまな機能があります。これらの機能はある程度独立しています。だから、言語聴覚療法を一生懸命やっても、視空間能力障害がよくなるわけではない。ところが、一つの機能だけ例外があります。それは注意集中力です。半側空間がわからない人に注意訓練をすると、空間認知がよくなる現象があります。注意集中力は、いろいろな能力の基盤になっているのかもしれません。注意集中力を鍛えると、ほかの機能もよくする起爆剤になるのです。
 では、注意障害に対する訓練は、何をしたらいいか。ドリルをやる、コンピュータをやる、グループで何か活動する、就学・就労訓練をする……。何でもいいのです。ただし、リアリティーのある訓練であることが大事です。この訓練をすれば、日常生活にどのように役立つかが明確化されていなければなりません。そして、楽しく進めることが大切です。

当事者の感情的な痛みに配慮する
 リハビリテーションは、オーダーメードで組み立てること、ゴールを明確にすることが大切です。リハビリの世界では、歩けないから会社に行けないのならば車いすがあるではないか、歩行器があるではないか、家でやればいいではないかと考えます。いつまでも歩けないと言っているのではなく、とにかくゴールすることを考えるのです。
 そして、周囲の人が是非とも大切にしていただきたいことがあります。それは、障害の感情的な痛みに十分配慮することです。感情的な痛み、当事者が置かれた痛みを理解しましょう。行動は感情の結果としてあらわれる。悪い行動が起きたとすれば、それは何らかの感情が関係しているのです。当事者は不安を抱えています。場所がわからない、介助が必要だ、仕事ができない、友人が減った、打ち込むものがない……。このようなさまざまな問題を抱えています。そのため、うつ気分になる、注意散漫になる、やる気がなくなってしまったりします。また、睡眠障害、頭痛というような身体症状まで出てくるのです。リハビリをするときにも、当事者の気持ちを理解してあげてください。 人の 1 日は「日常生活」「仕事」「遊び」の三つに大きくわけることができます。この三つをサポートしていくことが大事です。手が動かないとき手の動きをよくするだけの視点では不十分なのです。以前、私は作業療法の部屋にパチンコ台を拾ってきて入れたことがあります。パチンコ台をガラガラ音をさせながら、楽しみながらやるのもリハビリのアプローチなのです。

脱抑制・記憶への対応法
 人間の行動原理をみてみましょう。
 人に絵を描かせたいと思うときには、筆や絵の具などを用意する、あるいは皆さん自身も一緒に描くといった先行的な要因をセットします。そして、絵を描いた後に褒められたという強化をつけます。すると、絵を描くという動作がこれからも続いていきます。
 イライラする人は作業が難しい、意にそぐわないなどという原因があって、ますますイライラします。そして、イライラすると気がまぎれるという結果があるので、イライラという行動はこれからも持続するのです。このように行動が起きるためには、先行する要因と結果要因があるのです。
 よい行動を引き出すには、まず生活しやすい環境、心地よい人間関係、個人のペースが保たれるなどの環境を整えることが大切です。そして、よい行動が見られたら強化を即座にします。ほめる、楽しい、ホッとするなどの心地よい環境を即座に用意するのです。
 一方、悪い行動、人を殴った、大声を上げるなどの行動に対しては、怒鳴ったり、叱ったりしてはダメです。無視ぐらいにとどめます。叱っても一時的な効果しか得られないだけではなく、プライドを傷つけ、不安感を増強させてしまいます。だから、無視ぐらいでとどめます。
 記憶には言語的な記憶と、からだで憶える記憶があります。朝ごはんは何を食べたか、日本の人口は何人いるかという言語的な記憶と、自転車のこぎ方などからだで憶える記憶は、記憶する方法が異なります。だから、記憶障害がある場合は、自分の得意な記憶方法を身につけなくてはなりません。記憶障害をよくするのには、スケジュール・メモ帳・促し・手かがりなどの代償的手段を身につけることです。また、からだを使って憶える記憶は、失敗しないようにする工夫をしなくてはなりません。それは、言葉での学習が不得手な人は、動作の失敗を言葉で修正しても効果がないからです。しかし、失敗動作はからだで覚えるから、失敗を繰り返してしまうという現象が起きます。失敗をさせないために、最初から答えを教えてあげるのも一つの方法です。

良い行動には目印をつける
 社会に参加していくための必要な条件の一つは、自分の行動を調節できる能力です。行動の調節が過度に働いてしまうと、脱抑制、暴力、暴言、こだわりといったことになります。一方、行動そのものが働かなくなると、引きこもりになるのでしょう。だから、調整のバランスが重要です。
 そのためのリハビリテーションには「ストレス予防接種」と呼ばれる方法があります。これは、ストレス対処法を学び、討論し、実際に応用するのです。わざとストレスを入れて、それに鍛えられるようにするのです。場慣れすると言ってもいいでしょう。また、よい行動を強化する。良い行動をしたときには、「いい」と言ってあげる。これは行動に目印をつけるという意味があります。当事者は、どの行動がいいのかわからないので、周囲が目印をつけ、強化してあげるのです。
 また、社会に出て行くには、社会の中の自分を知ることも大切です。しかし、これが難しい。自分の障害を認めない理由の一つは、脳が損傷したからです。
 そして、もう一つが防衛反応です。自分は何も変わっていない、仕事ができると信じているという防衛反応です。いまの自分を守りたい、パニック状態になりたくないために出てくる反応なのです。周囲は、このような当事者の気持ちを理解することが大切です。

症状は必ずよくなる
以前、脳の血流検査をしたときのことです。健常者に暗算をやってもらい血流を調べたところ、左側の前頭葉が赤くなりました。左側の前頭葉を損傷している高次脳機能障害者の場合、反対側の脳が赤くなりました。障害をあたかも避けるかのように違うところの血流が増えたのです。脳はこのように復活し、これが回復につながっているのだと思います。
 可塑性という言葉をご存知ですか ? 可塑性とは形が変わっていくことを意味しています。たとえば、最初はスケジュール表を見なかった人が見るようになったのは、脳の中でも変化が生じたのです。これをきちんと顕微鏡で見れば、脳の神経線維が増えてきたなどという現象がみられるかもしれません。
 高次脳機能障害の症状は、時間はかかりますがよくなります。そのためには、まず周囲が障害について理解することが何よりも大切なのです。

 

 

NEWS  第 2 回地方支援拠点機関等全国連絡協議会が開催
適切な支援で安定した
日常を取り戻すことができる

                                                     田辺和子

3 月 9 日、東京都港区で、高次脳機能障害支援普及事業における第 2 回地方支援拠点機関等全国連絡協議会が開催され、都道府県の高次脳機能障害支援の担当者が集まり事業の進展状況の説明があった。午後のシンポジウムで、田辺代表が発表した「サークルエコーの活動を通して」を紹介。
 

低酸素脳症は重度の人が多い
 サークルエコーの会員 30 名が高次脳機能障害になった原因は、会の発足当時は喘息や水難事故の若者の割合が多かったのですが、最近は、働き盛りの若いお父さんの心筋梗塞が増えています。心筋梗塞 32%、川や海、プールでの水の事故が 14%、脳血管、喘息、交通事故がそれぞれ 10% です。全体の 9 割が呼吸停止を経験した低酸素脳症です。
 図は『高次脳機能障害』(橋本圭司著)に掲載されているグラフです。これによると、脳卒中の方は一番上のライン。発症時から数年にわたり回復し続けています。次の段の脳外傷の人たちもそれに似た回復の曲線になっています。

図 高次脳機能障害者の認知機能の低下


資料:『高次脳機能障害 (橋本圭司著/ PHP 新書)

その 2 本の線が右肩あがりなのに対し、低酸素脳症は一番下、低い線が続いています。重度の人が多いというのはこの表にもあらわれています。
 しかし、グラフでも、平らなラインが 5 年くらい続いた後に上向いているように、サークルエコーでも、5 年 6 年経つうちに、コミュニケーションがとりやすくなったと感じられる人が多いのです。「眠っていたのが動き出したようだ」と表現する家族もいます。一方、いくらか目覚めたという感じの中で、パニックなどの精神症状を起こす人もいます。現在、精神症状への支援が少ないことも、サークルエコーの中では大きな問題となっています。
 このグラフのもとになった、脳外傷の人たちの自立度に関する調査の中から低酸素脳症のデータをいただいて分析したところ(FIM/FAM によると)、低酸素脳症の人の自立度は脳外傷の人たちの半分以下、介助の度合いは 3 倍から 4 倍という結果になりました。私は、ADL レベルの介助が必要な人たちのことを、重度の人と申していますが、そう言うと「車いすですか」と聞かれます。身体障害がないのにも関わらず、ADL の介助が必要な人のことが、あまり想像できないようです。まだ存在自体が知られていない段階のようで、話がかみあわないことが多いです。
 また、そのような人たちは、手がかかり、お金もかかるけれど効果が少ないと思われているのかもしれません。しかし、ご自分の障害に気づくことで辛さを抱えることもある人たちに比べ、適切な支援で安定した日常を取り戻すことも多く、支援のしがいがある人たちでもあるといいたいのです。難しいと敬遠する理由はありませんよといいたいのです。ただし、適切な対応がなされれば、ということです。実際には、あまりにぞんざいではないかという対応で、かえって問題を生み出していることがあります。

認知症はムリと断られる現実
記憶障害のほかにも複合的な認知機能低下があると、DSM4 など(※)の基準によって認知症という判断が下されることがあります。しかし、高次脳機能障害は、国際基準を超え、医学だけの基準を超え、わが国の制度とにらめっこする中で整理がされてきた概念です。さらに、厚労省は進行性でないものは高次脳機能障害とするのが妥当であるとの見解を出していますが、その考え方は支援の現場に普及しているとはいえません。水難事故で重い認知機能の障害が残った若者に、知的の作業所を希望しても「認知症はうちでは無理」と断られるようなことが実際にあるのです。
 当事者や支援機関での混乱をなくす説明が一刻も早くなされるべきです。
※精神疾患の分類と診断の手引き

自立への支援が遅れている
私たちに寄せられる相談で多いのは、ひとつには病院から退院する先がないという問題、さらには、親亡き後という問題です。
 成人して独立して暮らしていた人が障害をもって親のところに U ターンしてくる。高次脳機能障害の特性からみて、親亡き後という言葉はあまりに不合理です。つい先日、50 歳の息子さんが高次脳機能障害になり、離婚して 85 歳の親御さんのもとに帰っていらしたことで、ご相談がありました。
 成人までの子供を親が養育するのは当然のことです。それは障害があってもなくても同じこと。しかし、中途障害である高次脳機能障害は、自立していた成人に突然、支援が必要になってくる。その場合の新しい支援法を提示しなくてはなりません。
 就労支援も、作業所も、住まいも同時に考える必要があります。デイセンターに通うのは家からだけでなく、グループホームからケアホームからという選択肢が必要です。
親亡き後、将来のことではありません。

 

読者からのお便り

エコー会報 Vol.27 NEWS
「高次脳機能障害は人それぞれ違うから
『理解という名の愛がほしい』」 を読んで

*** Miracle を信じて ***
 先日、サークルエコーの会報誌を拝見致しました。あの事故から10年近くの歳月が流れ、今日に至るまでの道のりを読み終えて、深く感動いたしました。
「あきらめずに続けること」何でもないようで、持続させることは、やはり大変なことかと存じます。
 でも、ご家族の皆様は、固い絆で結ばれ、大きな力となって、ユウコさんを支えてくれることを確信しています。「理解という名の愛」は、幸福の青い鳥となってユウコさんの手のひらに止まる、そのときは一緒に捕まえてあげたいです。☆ 遠くから、いつも応援しています。    by F.N.

ユウコさんの進歩を感じ、楽しみです。
 ユウコさんがご家族の愛に包まれて日々を過ごされているご様子がとても良くわかります。
 昨日のテレビでも偶然、高次脳機能障害が特集で放映され、脳の回復力を再確認しました。毎回ユウコさんの進歩を感じ楽しみです。    T.T

祖母様の対処術に心打たれました。
「理解という名の愛がほしい」を読ませて戴きました。
 あんなにも厳しい現実と将来に対する不安に向き合いながら、ご家族の皆さん、とくに祖母様の孫に対する自然な(しかし、「コロンブスのたまご」的な)対処の術を拝見して、心を打たれました。
 これからも平坦ではない道が続くでしょうが、希望を持って着実に進まれんことを念じております。  T.O

 

心のファイルから
家族 3 人、精一杯に走っている姿を、
お父さんは、きっと見ている

東京都立川市・板倉裕子
私のため息の意味が
主人にはわかっていたのかも……

 主人が倒れたのは、突然のことでした。
 平成 16 年 2 月 1 日(日曜日)朝、トイレで倒れ、病院に搬送され、聞かされた病名はくも膜下出血でした。そして、2 年 7 カ月後、また突然逝ってしまいました。
 それまで病気知らずの主人にこんなことが起こるとは、と信じられずにいる家族に医師から言われたのは助かるかどうかは五分五分、助かっても植物状態というものでした。
 当時の我家はサラリーマンの夫、大学生の娘、成人式を迎えたばかりの自閉症の息子、その世話をしながら働く私でした。
 幸いにも一命は取り留めたものの意識の戻らない主人に途方にくれそうになりましたが、息子の存在がそれを許してはくれません。小さい頃のように常に手をつないでいなければならないほどではありませんが、毎日の送り迎え、日常の世話はやめるわけにはいきません。主人を病院に見舞っているときにもいなくなってしまい、探し回ることもしばしばで、こんなときぐらいお願いだからじっとしててと思ったものでしたが、もしかしたら、このおかげで落ち込む暇もなく、前へと目を向けることができたのかもしれません。
 助かっても植物状態と言われていた主人でしたが、なんと半年後にはベッドに座り、「痛い」「かゆい」程度の言葉も出てきたのです。奇跡的な回復をするのではないか、と希望はふくらみましたがどこか違うのです。意識が戻ったばかりでボーっとしているだけではなく、記憶がほとんどないようなのです。とくに、最近 20 年程のことは忘れてしまったようでした。
 これが「高次脳機能障害」というもので、後遺症だからこれ以上の回復は望めないと聞かされました。この時点で、多動で目の離せない息子と車いすの主人と2 人の認知障害者を抱えたことになってしまいました。
 ほかに持病もない主人は自分で食事もとれるようになり、体力も戻り、車いすをこいで移動できるようになりましたが、どこに行ってしまうかわからず、目が離せなくなりました。さらに異食症も出てきて周りの人の食事に手を出すことはもちろん、通りすがりの人の洋服、荷物、ベッドにいるときはパジャマ、布団、あらゆるものを口に入れてくれました。
 命のかかった時期もありました。意識さえ戻ってくれれば、と思った時期もありました。その希望は叶いましたが、その先にあったのは片時も目の離せない状態でした。
 思わずため息が出てしまいましたが、それを見て主人はよく機嫌を悪くしていました。ため息の意味が少しはわかっていたのでしょうかね……。
 その一方で、このまま病院にいてもこれ以上回復しないのなら、家に連れて帰れないものかと考え始めました。息子を 20 年も家で育ててきて、福祉制度も利用
してきた経験があります。一人が二人になっても大変は同じ、何とかなる方法を考えてみよう、ただし時間をかけてやれる自信ができたら少しずつ試していこう。あせらず、ゆっくりと……。
 でも……。結局、倒れてから一度も家に帰ることなく、食べ物を喉に詰まらせるという思わぬ事故で亡くなってしまいました。異食症が克服できなかったということでしょうか……。

いままでで一番、
家族が一つになれている気がする

 一つ一つの問題をあせらず、長期戦で取り組むことを心がけていたつもりですが、振り返ってみれば、必死の 2 年 7 カ月だったようです。
 でも、最初のとき、あのまま亡くなっていたら、悲しさ、無念ばかりが残ってしまったかもしれません。あの 2 年 7 カ月があったから、私たちに元気なお父さんのほかに、家族の中で一番若くなってしまったお父さん(自分では 20 歳と言っていたので)と子供 2 人と私の楽しい思い出をふやすことができました。
 いたずら(?)をみつけられて子供に怒られてはバツの悪そうな顔をしたり、照れ笑いをしていたお父さんと過ごした時間はかけがえのないものとなっています。
 娘があるとき、「いままでで一番家族が一つになれている気がする」と言っていましたが、私も同感です。
 主人はいなくなってしまいましたが、時間は止まってくれません。残された私たちは、お父さんの分まで明るく暮らし始めています。
 卒業後、地方に就職した娘ですが、こちらに戻り、いまはまた 3 人の生活です。息子は企業に就労でき、
毎日はりきってでかけていますが、相変わらず母親つきです。私は息子の送り迎えと仕事で大忙し。
 家族それぞれ精一杯走っている姿を、きっと元気な姿に戻ったお父さんは、どこかで見てくれていると思います

 

報告・東京都の動き
東京都障害者推進部には、06 年度にニーズ調査検討会が設置され、高次脳機能障害者支援ニーズ調査表が作成された。調査票は 12 月に家族会を中心に 800 組に配布、年が明けて回収された。4 月 17 日には、集計結果を再度見直すなど報告書の仕上げのための検討会が開かれた。
 一方、医療政策部は、05 年に高次脳機能障害者支援モデル事業検討委員会を設置し、地域支援ハンドブックを作成。06 年度は、足立区、世田谷区でモデル事業が実施された。
 これらの検討により、今年度は、都内各市区町村に高次脳機能障害支援のためのハンドブックが配布される予定。
これら 2 つの検討委員会には、委員として東京高次脳機能障害協議会 (TKK) から、矢田代表、今井副代表、田辺副代表 ( サークルエコー ) が、入っている。検討会の結果はTKK の ML に流され、会員たちからも意見を募った。TKKが設立されて 4 年、行政との協働は徐々に進んできているといえよう。

 

フレンズ便り
瀬戸保健所で「高次脳機能障害」のお話をさせていただきました。 3 月 7 日には、「精神保健福祉関係機関連絡会議」に出席、約 45 分間「高次脳機能障害」について講演。会議メンバーは、2 市 1 町の障害福祉窓口責任者、社協責任者、病院の専門家、福祉施設の責任者等の約 20 名でした。専門家ばかりでしたので「高次脳機能障害」という言葉は全員承知されており、説明後の質問では、実際に当事者と対応した経験のある方から 3件の質問を戴き、身近にこの障害を捉えていただいていることがわかり、大変うれしく思いました。( 質問の内容@講演会開催による普及活動の支援 A生活支援ネットワークづくりの支援B相談支援コーディネーターの配置)     豊田
  ナノ便り


三郷市生涯学習フェスタ
日時 :5 月 20 日 ( 日 )
場所 : できるゾウ 2007 三郷市勤労者体育館内容 : ナノはトールペイント、アロマテラピー展示に体験参加。

セミナー 「成年後見制度 ―遺言について―」
日 時 :5 月 26 日 ( 土 )13:00〜
場 所 : 三郷市文化会館視聴覚室講 師 : 佐々木隆明氏 ( 行政書士 )

 

アヤちゃんの1週間の過ごし方

当事者のみなさんは、毎日をどのように過ごされているのでしょう? 大分にお住まいの三浦さんにアヤちゃんの1週間のスケジュールを教えていただきました。  
 

私と娘は十時さんご一家と出会って、ハウスのお手伝いをさせていただいてることを本当によかったと思っています。ハウスに通いだしたのは、昨年の春からで 4 月 10 日で一年になりました。
 恵まれすぎた自然の中での作業は、娘に元気と、たくましさをくれました。土や植物たちから教えてもらうこともたくさんあります。
 感情表現が欠けていた娘ですが、うれしいとき、楽しいときは笑顔がでるようになり、みなさんが笑顔がいいと言ってくださることが何よりもうれしいです。
 当事者同士が集い、楽しみながらリハビリできる十時花園のような場所がたくさんあると、本人も家族も元気に過ごせるだろうな〜といつも思っています。
 娘たちが育てた新鮮でおいしい野菜や、元気いっぱいな花をみなさんに見ていただきたいけど、やっぱり遠いですね……。
 一度くると、みなさんきっと移住したくなりますよ !

曜日
午前中 ピアノ練習
音楽鑑賞
通院(隔週)
買い物
ピアノ練習 ピアノ練習
DVD 鑑賞
ピアノ練習 ドライブ、温泉、ショッピングなど、本人の希望で決めて出かける 基本的には休息日
☆来週のスケジュール確認
☆趣味の手芸製作
☆ DVD・ 音楽鑑賞
午後 作業リハビリ
(園芸)
十時花園にて
ピアノ練習 作業リハビリ
(園芸)
十時花園にて
ST(リハビリセンターで)
夜・ピアノレッスン
作業リハビリ
(園芸)
十時花園にて

その他

・友達が遊びにきたり、カラオケや映画に連れて行ってくれる
・月に 1 〜 2 回手芸教室 ・月 1 他県の病院に通院・パソコン練習 ・家事の手伝い

 

 

サークルエコー行事&会合報告
2/4 講演会 安積散歩「共に生きるあなたとわたし」……調布男女共同参画推進センター(田辺)
2/21 サポート研究会……立教大学(田辺)
2/24 東京都講演会「高次脳機能障害の診断とリハビリテーション」 
                                                                  …… 都庁 ( 田辺、伊地山、高橋 2)
2/24 TKK 定例会……世田谷ボランティアセンター(田辺、高橋 2)
3/3 えこーたいむ……(伊地山、高橋 2、田川 2、伊藤  計 6 名)
3/10 サポート研打合せ ……横浜(田辺)
3/10 これからのリハビリを考える市民の集い……両国・KFC ホール(高橋 2)
3/12 懇談 安宅氏……杉並・オブリガード(田辺)
3/14 TKK 7/8 シンポジウム予定会場訪問・打合せ……赤坂・日本財団(田辺、高橋)
3/14 東京都 高次脳機能障害者支援検討委員会……都庁(田辺)
3/17 えこーたいむ……(西田、伊地山、高橋 2、田川 2、廖  計 7 名)
3/18 横須賀家族の集い「マリン横須賀」……浦上台障害者相談サポートセンター ( 田川 )
3/21 TKK7/8 シンポジウム第 1 回実行委員会……世田谷ボランティアセンター(田辺)
3/23 多摩エコー(脳損傷分布図調査準備)……伊地山宅(田辺、西田、伊地山、高橋 )
4/4 TKK7/8 シンポジウム第 2 回実行委員会……調布市総合福祉センター(田辺、高橋 2)
4/7 えこーたいむ……(西田、伊地山、高橋 2、田川、村田、伊藤、来客:小倉裕さん親子 計 9 名) 
4/17 TKK7/8 シンポジウム打合せ……東京慈恵会医科大学附属病院(田辺)
4/17 東京都 ニーズ調査結果報告検討委員会……都庁(田辺)
4/21 えこーたいむ……(西田、伊地山、田川、大島母子、高橋ま、廖、
                                                                                  来客:田川さんの娘さん 計 8 名) 
4/21 パーソナルアシスタンス☆フォーラム……西東京市(高橋)
4/23 TKK7/8 シンポジウム打合わせ……東京慈恵会医科大学附属病院(田辺)
4/27 TKK7/8 シンポジウム第 3 回実行委員会……調布市総合福祉センター(田辺、高橋 2)

 

理解を求めて 〜会員の広報活動〜
発表
田辺和子「サークルエコーの活動を通して」(高次脳機能障害支援普及事業第 2 回地方支援拠点機関等全国 
 連絡協議会・公開シンポジウム/ 2007 年 3 月 9 日)
田辺和子「高次脳機能障害支援施策の変遷」(サポート研公開セミナー : 脳損傷者の地域生活支援の可能性  ーオーストラリア・クイーンズランド州の実践から学ぶー/ 2007 年 3 月 10 日)
シンポジスト

田辺和子「Talk Live 長谷川幹がリーダー達と語り合う」2007 年 3 月 21 日

 

喜・怒・哀・楽

みなさまからのお便りコーナーです。
原稿は FAX(042-***-****)で、伊地山までお
寄せください。

  今号の「喜・怒・哀・楽」は、「我が家の工夫」というテーマで、秋永さんと松山さんからお便りを頂戴しました。また、川崎さんからのお便りは、つい微笑んでしまう、ちょっといいエピソードです。  

新たな発見に喜びを !
                                                                                        石川県小松市・松山 栄美子

まつやまさんちの工夫
@ 何回もの声かけ
Aデイサービスでの絵画活動

 食後の片付けのとき、「お茶碗を運んで!」と声をかけると、自分のお茶碗 1 個を落ちないように両手で挟み、大事そうに持ってくる。話しかければ少々の会話もでき、ときには冗談も……。頭の体操にと見ているクイズ番組では「答えは何 ?」の声かけに即答する得意気な顔は元気なときの息子そのもので、昔の記憶が残っていることにも驚かされます。
 以前は表情や反応も悪く、歩いていてもすぐ立ち止まってボーっとしていることが多くありましたが、最近ではちょっとしたしぐさや行動に大きな喜びを感じるときもあり、わずかながら進歩していると実感します。でも息子は低酸素脳症のため、毎日の生活では何回もの声かけや手助けは 6 年経ったいまも必要で、精神的負担は大きく、ときにはイライラすることも、これが現実です。
 そんな息子に思わぬ出来事がありました。
 昨年末、デイサービスの絵画作品展を見られた方から、息子の絵は感性豊かなとてもいい作品なので、是非譲ってほしいと言われ、ビックリしました。息子に「画伯、いくらで ?」と聞いたところ、「百万円」と言ったのには大笑いでした。
 「息子と絵」 、以前の息子からは想像もつきませんが、新たな発見です。
 これからの人生の励みになるように願っています。

 

いまは"ありがとう"をたくさん言ってくれる
                                                                                             静岡県沼津市・秋永 明子
あきながさんちの工夫
@自宅にさまざまなものを設置
・1.8m、1.5m、1m の段違いの手すり
・歩行訓練のための平行棒
・1.8m × 3.6m の大きなスベリ台
A在宅での言語療法     
Bデイサービス
Cおだやかに接するのを心がける

 12 年前、喘息発作で心肺停止になり低酸素脳症と診断されたとき、娘は完全に四肢麻痺になり寝たきりで、退院後は 2 時間ごとの体位交換から始まりました。
 自宅にバスタブを持ってきてもらって入浴サービスを受け、膝上までの装具をつけて立たせていました。廊下には、1.8m、1.5m、1m の段違いの手すりや歩行訓練のための平行棒、部屋の中には 1.8m × 3.6m の大きなスベリ台(自分の体重の重さですべるときに手を動かすため)、大型の赤ちゃん用の歩行器(なかにサドル自転車用のもの)、そのようなものが所狭しと置いてあり、まるでリハビリの教室のようでした。週3 日は沼津市立病院にリハビリに通い、中伊豆リハビリ病院からは言語療法の先生(声は 5 年くらい、一言も出ませんでしたので)が在宅でのリハビリ。
 何とか歩かせてやりたい。良くしてやりたい。淑子の声を聞きたい一心でした。
 少しずつ良くなってくると、家族の内ばかりでは良くないと思い、市に相談し訓練ホーム、デイサービスに通い始めました。デイサービスに行って歩行訓練、トランプをしたり、本を読んだり、ピアノを弾いたり、毎日結構忙しいんです。
 デイサービスに通い出してから、表情が明るくなり、笑顔が見られるようになりましたが、その反面、精神的に不安定にもなりました(親からみればそれも良くなっていく段階かな ? とも思いましたが)。反抗的なことをするだけでなく、歯医者での治療中に呼吸停止になるなどパニックを起こしたりするので、沼津市立病院の先生と相談しましたが、薬には頼らず、淑子の場合は結局母親である私の接し方を変え、いらついているときは席を外したり、やさしくしたり、なるべく私がおだやかにおだやかに……。結構大変でしたが……。いまは“ありがとう”をたくさん言ってくれます。
 淑子は高次脳機能障害と言われている人達のレベルまではまだまだです。私達がいなくても一人で生きていくことができるくらいのこと、それができるようになってくれるのが主人と私の願いです。

ウフッ   (^.^)                                                                         千葉県船橋市・川崎 弓子
 「御飯ですよ〜」と携帯に電話を入れると「御飯ですよは桃屋ですよ」と言いながらニコニコと 2 階から降りてくる息子(どうやら「山」「川」の乗りらしい)。こんな笑顔を見せられたら気合いを入れて、ローカロリーの食事を作らねばと思ってしまう。最近の我が家での夕食前、ほっとするひとときであるし、めっぽう笑顔に弱い母親でもある。
 地域での自立を目指している息子には取り合えず 2、3 の関門がある。
 「一人での外出時に家族が居場所の確認ができること」「携帯から自宅に電話を入れ自分の居場所を知らせる」「困ったとき、自分から近くの人に助けを求めることができる」等である。
 ポケベル、PHS だった頃の息子であるが、それも使ったことはないという。
 携帯を持たない主義の母親だったので、親子で同機種を買い二人で練習を始めた。息子の携帯には覚えやすいようにいろいろと工夫を凝らしたので、すんなりと覚えた。
 そして「桃屋ですよ」になった次第。
 コンビニから携帯で連絡を取り合いながら買い物をしてきてくれるようになった。
 小銭を使い、つり銭のないように支払いもできる。
 もちろん、黒子のヘルパーさんの見守りがあってのことであるが……。先日 ヘルパーさんと携帯の練習を兼ねた花見に出掛けた。
 電車の乗り継ぎ時間とか、ひと休みのときに携帯で「今、どこで何をしているか」等様子を知らせてくれる……。が、一つ問題があることがわかった。
 それは次回で……。

 

インフォメーション
東京高次脳機能障害シンポジウム 
ここからつくろう! 支援と啓発 〜オーストラリアの実践から学ぶ〜
日時 7 月 8 日(日)12:30 開場 13:00 開演(会費 500 円)
基調講演:「脳損傷者・家族のニーズにどう応えるか」クイーンズランド脳損傷協会代表 ジョン・ディキンソン氏
パネルディスカッション : 高次脳機能障害者支援の課題と今後に向けて [ パネリスト ] 田中眞知子氏 : 東京都心身障害者福祉センター 地域支援課地域支援 係長 和田敏子氏 : ケアセンター ふらっと ( 世田谷 ) 施設長
矢田千鶴子 : 東京高次脳機能障害協議会 代表
[ 総合司会 ] 橋本圭司氏 : 東京慈恵会医科大学附属病院 リハビリテーション専門医

問合せ先:東京高次脳機能障害協議会(TKK) www.brain-tkk.com

 

今年度も賛助会員へのご協力宜しくお願いします。
年会費(4月〜3月 ) 1 口 2,000 円
郵便振替 00180-0-546112 サークルエコー 
正会員 ( 当事者家族 ) は、入会金なし、年会費 3,000 円です。

渋谷区社会福祉協議会に申請をしていた助成金 40,000 円の認可がおりました。
40000 円は、神宮前作業所に置くキャビネットの購入、合宿講師謝礼に使わさせていただきます。

 

2007 年 5 月〜 8 月 エコー行事予定 
  ・えこーたいむ
     5/19、6/2、6/16、7/7、7/21、8/4、 8/18
     変更の場合がありますので、ご確認ください。
  ・多摩エコー……随時
  ・ナノ……随時
  ・フレンズハウス(瀬戸市)毎週月曜、第 1・3 金曜、第 4土曜

 

作品募集!
 
・家族、支援者、サポーターの方の「原稿」
・家族の方の息子(娘、夫、妻)が語った、「今日のひと言」
・当事者の方の「原稿」、「絵」、「イラスト」、「詩」、「短歌」、「川柳」、「写真」、「手芸作品の写真」、「私のおすすめの本」、「私のおすすめのテレビ番組」、「お気に入りの言葉」など作品についてわからないこと、送付方法につきましては、編集担当まで
編集後記‡「心のファイルから」を読んで、私は、両親を介護するとき、「家族が一つになった」と実感できるように、両親を亡くしたときには、板倉さんのように、明るく日々を暮らしていきたいと思いました。また、今号の表紙はいかがでしたでしょうか。「写真で表紙を飾りたい」という私の願いに、今仲ヒロヤスさんが応えてくれました。
☆ホームページ☆ サークルエコー http://www.circle-echo.com