高次脳機能障害を考える
サークルエコー
本文へジャンプ
会報第2号(2000年7月号)
活動の場ができました

 『サークルEcho』は、低酸素脳症の後遺症による重度の高次脳機能障害者と支援する人たちのグループです。発足後1年半ですが、それぞれは個人的に6年7年と高次脳機能障害の問題と向き合ってきました。
 
 発症時には当事者の団体はどこにもなかったのですが、現在は様々なグループが、リハビリの困難さ、復学や復職・就労の難しさなどの悩みを抱えつつも、行政への要請や社会の理解を求めるための活動を展開しています。
 
 しかし、多くの高次脳機能障害者の中でも、身体的にほとんど障害がないのに、意思表示がほとんど出来ず身辺処理全般にわたって介護を要するEchoの若者たちは例外的な存在といえるかもしれません。私たちは高次脳機能障害をとりまく様々な問題の中で、特に「介護」の必要な重度の障害について取り組んでいます。

 今年5月20日、サークルEchoは神宮前に週末の活動場所「えこーたいむ」と事務局を開設することが出来ました。昨年来、ご相談に乗っていただいていた立教大学の赤塚先生のご紹介で、知的障害者のための「神宮前作業所(永倉春夫所長)」にスペースを提供していただきました。
このスペースを中心に、今後のEchoの活動として考えていることは、
@ 高次脳機能障害者の中でもきわだって重度で介助の必要な若者たちの実質的な生活の場と将来の生活の
場の基盤作り
A 相談窓口。これまでにも聞き伝えて相談の電話が各人の家にかかってきています。新しく受傷した人の相談の窓口がほとんどありません。

@は、「エコータイム」に毎週土曜日に集まり、活動を通してそれぞれの可能性を探る試み始めました。通所施設、グループホームへ移行するための基盤作りもねらいのひとつです。

Aは、事務局にて、電話、ファックス、eメールで相談を受け付け、他団体や専門家の協力を受けつつ制度などの案内や紹介等の活動をする為の準備を進めています。
 小さなグループであるサークルEchoがこのような具体的な場を得られたことは、大変ありがたいことでした。実りのある活動が出来ますよう今後とも多くの方々のお力添えをお願いしたいと思います。
サークルEcho
サークルEcho事務局:
渋谷区神宮前5−30−3 ニューアートビル4F 神宮前作業所内
(えこーたいむ : 土曜日午後1時〜5時 変更の場合があります)


実態に見合った援助を・・・ −厚生省と会合-
 6月6日、参議院議員会館にて、厚生省障害保険福祉部中村健二氏、精神保険課重籐和弘氏との会合を持ちました。平成8年2月に国会ではじめて高次脳機能障害を取り上げた参議院議員岩佐恵美氏の呼びかけで実現しました。
 サークルEchoのメンバーは身辺処理にも介助を要することが特徴なのですが、精神手帳や、身体手帳でも等級が低くて見合った援助を受けられない現状について説明しました。
 また、高次脳機能障害特有の症状に対して一部に身体障害手帳の交付もあるかのような情報も流れていたのでその可能性について質問しました。この点については失語や身体に麻痺などの障害が障害が出ている場合は身体手帳が取れるということで、高次脳機能障害特有の症状が組み込まれたわけではないとの事です。
 6月に実施された実態調査アンケートのタイトルが「脳損傷による生活障害の実態調査」となっていますので、用語についても聞いてみました。厚生省では、今後は「脳損傷による生活障害」という表現を使うとのこと、その方が「高次脳機能障害」よりも「中枢神経系の広い範囲のものを含められるからということでした。障害の定義、範囲がはっきりしない現状では、地域の行政の理解を得るのは大変な忍耐と努力が必要なことを多くの人たちが経験しています。厚生省は当該障害についてのガイドラインを策定し、すでにこの3月、各県の福祉課長を対象に、地域格差の是正と適切な処遇を求めるための会合を開いたそうです。
 まだ社会的にはほとんど理解されていない障害ですが、この2〜3年の障害各団体の努力は少しずつ行政の流れを変えつつあると感じました。
学生無年金障害者とは・・・
 障害基礎年金を受けるには、下記の需給要件を満たすことが必要です。
 受傷時の年齢が20未満であれば、障害の程度に応じて傷害年金が給付されますが、20歳を過ぎると下記の需給要件を満たしていなければ傷害年金を受け取ることは出来ません。大学や専門学校在学中、20歳を過ぎて事故や病気で重度の障害者になった人々の中には、重度の障害を持ちながら、制度の狭間に落ち傷害年金の支給がないため、将来への不安を抱えながら生活をしている無年金障害者は、約10万人いるといわれています。
 国の付帯決議に基づき、無年金障害者の救済を早急に講じてほしいと思います。

1 公的年金制度加入中の初診(加入要件)
2 初診日前に保険料の納付要件を満たしていること(納付要件)
3 障害認定日に一定以上の障害状態にあること(障害状態要件)
Takeさんに行ってきました。
 ファミリーサポートTakeは、越谷市内の元荒川沿い3LDKの明るくきれいに片付いたマンションの7Fにありました。
 平成10年5月に当時養護学校の先生をしておられた太田元治氏が利用者の生活に合わせたサービスをを、個人で立ち上げました。現在3人の若い職員とボランティアの方々に助けられて運営されています。
 資格よりも、何よりも、人間が好きな人がたくさんかかわってくれるのがとても嬉しいとおっしゃった言葉が印象的でした。
***<Take>の太田元治氏からFAXがとどきました。***

 生涯のある人や高齢者を、生涯に渡って家族が見て当たり前という縛られた考えから開放し、尚且つ、障害のある人や高齢者と暮らす家族が陥りやすい長期のストレス、社会的孤立、自主性の減退などの落とし穴にはまらないよう地域の資源を有効に活用し、障害を持つ人や高齢者とその家族が地域の中で豊かな人生を送ることが出来るように『安心感』『休息』『ゆとり』をもたらす生活支援が必要になってきます。教育・医療・家族・地域・行政等がそれぞれの立場を再確認し、障害児・者や高齢者を取り巻く環境の整備を共に協力しながら推し進めていくことが必要だと考えます。
ファミリーサポートTake
〒343−0821 越谷市瓦曽根1−4−22 ベルシェ越谷702
TEL/FAX 0489−64−8154

年 会 費 : 20,000円
タイムケア : 1,000円/時間
宿    泊 : 700円/時間
マサの記録 <闇>
 5日後、マサは目覚めた。それは、単に目を開けただけだった。目の上には、両親と妹の顔があった。母が何かを叫んでいた。妹も何かを言っていた。あの声は本当だったんだ。

 マサは安心して再び目を閉じた。おれは生きている。とどこかで言っていた。マサの頭に小さな、ほんの小さなエネルギーが走り抜けた。どこからどこへ向かったのか、全く未知の世界から、4次元の時間を突っ切って来たみたいだった。それが過去からなのか、未来からなのか、小さなエネルギーはマサの頭の中に収まった。

 マサは、周りに家族がいるとわかっていたけれどぐっすり眠った。目を閉じていてもなぜか母や妹を判断できた。これは何なのか尋ねてみる元気もなかった。それよりも声を出そうとするのに話せなかった。そちらのほうが大変だった。助かったけどおかしい。先生が来て、おれのことを話しているらしい。
 「最悪の場合、このまま寝たきりになる可能性があります。」おれは目を開けようとした。しかし、目はおれの意思を無視しやがった。馬鹿ヤロウ!おれはちゃんと生き返ったのだ!と叫ぼうにも唇は頑として動かなかった。身体がおれの命令を聞いてくれない!どうすればいいのだ、おれの頭は動いているというのに。耳も聞こえる。目なんかは開けていなくてもまぶたを通して見えるというのに。うん?なぜだ?そんな馬鹿なことってあるのか?やっぱりおれは生きていないのか? おれの心を訴えれない。なぜなんだ!おれの脳は手を動かせといっているのだ。「手よ、動け!」お母さんにおれは寝たきりではないと知らせようとしているのに、いまその手段がないのだ。夢であってくれ。夢ならば目を開ければすべてを解決してくれる。しかし目が開かない。おれはおれで生きていると意識しているはずなのに、(これはおれが言っているから確かなことだ)おれのことが他人に伝わっていかない。

 マサはあきらめきれなかった。母の落ち込んだ、悲しみの顔を早くいつもの元気な活力あふれる顔にもどしてやりたかった。いつもからかっている妹も泣いていた。 そんな妹の顔を見たくなかった。そんな医者の言うことなんか信用するな!おれは叫んだ。
 でもおれのほうを向いてくれなかった。

 「20分近く心停止していたので・・・」

 どこで計ったんだ!おれは思わず叫んだ。そんなに長い間、おれは死んでいないぞ。おれは人を確認した、そして光も見た。なんか変な言葉も聞いた。あの時おれは生きていたのだ。勝手な計測をするな!確かに20分も心臓が止まっていたらおれは死んでしまっている。意識することも声を聞くこともできないはずだ。いまおれは、医者の声を聞いているのだ。こうなると教科書の答えしか医者は言えないのだ。決して良くなるとは言えない。立場として仕方ないか。良くなると言って良くならなかったらどうする。そう考えると、おれはそこまで思ったんだ。不思議と落ち着いてきた。おれは再び無意識の世界にどっぷり浸かっていった。

 Tの声だ、Oの声も、TWも、Sも。なんだ?あいつら仕事はどうしたんだ?

 Tの目が光っている?みんなおかしいぞ。あれ?大学時代の連中の中になんでこいつがいるんだ?SY?おまえOを知ってんのか?なんて顔しているだ、ジョークばっかし言っていたのにSY何で涙なんか流してんだ。おいおい、待てよ、どこへ行くんだ。もっとここにいてくれよ。おれといつも馬鹿ばっかし言って遊んでたじゃないか。どこへ行くんだよ。おれはおまえと話したいんだよ。おまえと笑いたいんだよ。あぁ行っちゃった。O、何でおれの手を握ってんだよ。おまえ、確かちゃんと彼女いたよな。おれのこと好きとかじゃないよな。あぁ、そうか分った。みんなおれが死んでしまうのかと思っているだな。それともこっちから何も伝えられないから植物人間に、と思っているのかもしれない。おれは目を開けてやった。案の定「マサ!」「タニィ―」と叫び声が乱れ飛んだ。しかしそんなに長い間目を開けておれなかった。徹夜で麻雀をやった後のように重いまぶたが自然に眼球の上を降りていった。

「お願いだから目を開けて!」

とおれの足をさすりながら叫んでいるお母さんの声が遠くから聞こえた。疲れる。とにかく疲れる。身体を酷使するとか、頭を使うとかで疲れる疲れ方ではない。もうすでにどこにも力も何も残っていない、空虚、無、零、限りなくそんな世界にいるようだった。

☆☆☆ 「フリースペースあゆたか」の福島誠氏からEchoの若者たちへ ☆☆☆

ダイ様 発足間もない能登あゆたかに、スマートな大輔さんが現れ、マットに飛び込んでは笑顔を見せてくれたのが、そして、多摩川でボートに乗り、娘の真美と肩を組んでうれしそうだったのが、とても印象深く残っています。そうそう大師高校へも講師として出席してくださいました。ありがとうございました。追うと逃げる大輔さんを何度追ったことでしょう・・・。

ユタカ様 「根気と体力で川崎君に負けたね・・・お父さん!」あゆたかをスルリと抜け出し迷子にさせてしまった譲君を迎えに宮前警察に行った帰り、息子直樹が私に言った言葉です。昨夏再度の挑戦は、川崎授産学園での二泊三日の夏の家でした。ここでも又敗北。いつも最後のツメが甘い弱点をつかれました。楽しいこともいっぱいあったけど・・・。三度目の正直はいつになるかな、お手やわらかに・・・

マサ様 川崎市宮前区平から、歩きつづけて、10数時間、多摩川を越え、東京都大田区で翌朝保護されました。足裏は赤く腫れ上がり疲労は限界に達し・・・マリアンナへ救急車で・・・E先生に治療していただきました。電話をしている心と体のスキマは、貴方にとって、帰りたい思いが堰を切って流れ出す瞬間だったのかも知れません。痛いつらい経験をさせてしまいました。

三人の青年たちと僕の出会いは、僕に新しいステキな経験と、痛い、つらい経験の両方を与えてくださいました。ありがとう、そして、ごめんなさい。そして、そして、再会を!!
サークルEcho 創刊号を読んで下さった方々から寄せられたメッセージの一部をご紹介します。

○ 先日、名古屋市総合リハビリセンター心理療法室のN先生よりサークルEchoの創刊号を見せていただき、同じ思いをされて活動されている皆様の仲間に入れていただければ、とFAX致しました。私の娘もプールの事故で低酸素脳症になり、この6年間は誰にも相談することが出来ない手探りの日々でした。Echoの皆様がとても勉強され、外に目を向けておられる様子が伝わり、感心し、また励みになり2度3度と読ませていただきました。(T.S)

○ どんな事でもご相談ください。頑張りましょう。(T.A)

○ 職場の人たちにも廻して読んでもらっております。(I.A)

○ 良いことを行うというのは苦労が多いですね。だからやりがいもあると思います。創刊号までやりぬいていらっしゃる田辺さんに心からのエールを贈ります。(I.K)

○ 皆様の気持ちが伝わってくる紙面で、私も心より嬉しく思いました。(Y.H)

○ 大きな一歩を感じ、これからもサークルEchoがますます大きな輪となり、こだましてゆかれますことを祈らずにはいられません。(T.M)

○ 川崎さんのは親の立場ならではの実感があり理解を促すのに良い内容でした。ほかもわかりやすかったですよ。(K.E)
○ 今言うべきことを今言う、今伝えるべきことを今伝える。前に進んでいくことが周りも変えていくことなのです。母親達だから出来たのだと思います。(S.M) 

賛助会員になっていただきありがとうございます
 6月30日現在、72名の方が賛助会員になって下さいました。皆様からお納めいただきました会費は、Echoの活動を通して情報交換・行政への働きかけ・勉強会等、有意義に使わせていただきます。今後ともご支援、よろしくお願いいたします。
スタジオ・ウィより
 99年8月21日、スタジオ・ウィ「ありのままに」公演を行いました。当日、受付にてサークルEchoにご寄付をいただきました皆様、この会報の場を借りましてお礼申し上げます。ありがとうございました。
                                                                   谷口真知子
☆ 引き続き賛助会員を募集しています。
   年会費 : 1口 2,000円
   郵便振替 : 0018−0−546112 サークルEcho
 
Copyright 2008 サークルエコー  All rights reserved.